※この記事は許可を得て「アジト(note版マンガ雑誌)・辻家の人々009」より転載しております
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幼稚園の頃からスイミングスクールに通い続けていると、小学4年生になるタイミングで大会にも出場する選手コースに誘われた。
水泳は好きだったので迷うことはなく、その思いを父親に告げると1つ条件を提示された。
それは最低でも小学6年生までは続けるということだった。やるからには一所懸命、中途半端なことを許さない父親らしい約束事である。
その結果、3年間で学年別ではあるものの関東大会や東日本の大会で金メダルを数個、少し大きめの全国大会で3位と成績を残すことができた。
自分で言うのもなんだが才能があることはわかっていた。
ただ、約束の小学6年生になり、私立中学校からも何個か誘いもあったにもかかわらず、自分は水泳をやめると決めていた。
今後の人生を左右するかもしれない重要な選択だというのはわかっていた。ただ、週4回の練習、土日は頻繁に大会、水泳漬けの毎日で、正直水泳に飽きてしまっていたのだ。
そして、ほぼ同じタイミングでもう1つ人生を左右する選択を迫られた。
それは中学校での部活動である。自分の通うであろう市立中学校の説明会で部活動には必ず入らなければいけないということを知った。
やりたいことがなかったので、流石に悩んだ。そこで出した答えが野球だった。
理由は特にない。しいて言えば親父がプロ野球選手だったということぐらいだろう。
中学に入ったら野球をやる。父親にそう伝えた時、返答は「わかった」の一言だったが、その2日後。中学入学までまだ半年以上あったにもかかわらず早くもグローブが家に届いた。
その瞬間、我が子に野球をやってほしいと思っていた父親の気持ちに気付いた。
「もう少し早くやってあげればよかった」
そう、子供ながらに申し訳ない気持ちになった。