opel_sasaki

コラム

2023/2/7

【連載小説「辻家の人々」】013 中学野球の最後/辻ヤスシ

※この記事は許可を得て「アジト(note版マンガ雑誌)・辻家の人々013」より転載しております ※転載元はこちら ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 中学2年生の夏に高校野球に憧れ、野球部に再入部した。 ただ、自分が1年以上遊んでいる間、毎日練習を明け暮れていた同級生は実力を伸ばしていたため、レギュラーは疎か練習試合に出ることもほぼなかった。 それでも腐ることはなく、練習漬けの日々に耐えられたのは甲子園の舞台に立ち、観ている人に興奮や感動を与えたいという夢があったからだ ...

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2023/2/7

【連載小説「辻家の人々」】012 甲子園と松坂/辻ヤスシ

※この記事は許可を得て「アジト(note版マンガ雑誌)・辻家の人々012」より転載しております ※転載元はこちら ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 中学2年生・夏。 野球部を辞めたのち、読書部という名の帰宅部に所属したため夏休みは文字通り毎日が休みである。朝から晩まで友達の家に入り浸り、目的のない無駄な時間を過ごしていた。 そんなある日、いつものように友達の家へと向かい変わらぬ日常を過ごしていると、たまたま回したチャンネルで甲子園が放送されていた。 野球部を辞めて以来 ...

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2023/2/7

【連載小説「辻家の人々」】011 息子の嘘/辻ヤスシ

※この記事は許可を得て「アジト(note版マンガ雑誌)・辻家の人々011」より転載しております ※転載元はこちら ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 練習すらまともにさせてもらえない環境。先輩からの可愛がり。自身の事しか考えていない顧問。それらすべて嫌気が差し、入部3ヵ月で野球部を退部した。 そのことを親に直接伝えなかった。 いや、正確には“伝えられなかった”という表現が適当だ。 何故、伝えられなかったのか。 それは、自分が野球をやると言った時の嬉しそうな父親の顔を裏切 ...

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2023/2/7

【連載小説「辻家の人々」】010 野球部から読書部へ/辻ヤスシ

※この記事は許可を得て「アジト(note版マンガ雑誌)・辻家の人々010」より転載しております ※転載元はこちら ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 中学校入学と同時に野球人生をスタートさせた自分。これまでの人生、野球はプロ野球観戦がメインでプレイした経験は皆無に等しい状態だった。 それでも体力測定では常にクラスの上位に位置するほど運動神経は抜群だったため、野球経験が少なくてもすぐにレギュラーになれる自信があった。 ところが、現実は違った。 それは自分の運動神経や野球の ...

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2023/2/7

【連載小説「辻家の人々」】009 グローブ/辻ヤスシ

※この記事は許可を得て「アジト(note版マンガ雑誌)・辻家の人々009」より転載しております ※転載元はこちら ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 幼稚園の頃からスイミングスクールに通い続けていると、小学4年生になるタイミングで大会にも出場する選手コースに誘われた。 水泳は好きだったので迷うことはなく、その思いを父親に告げると1つ条件を提示された。 それは最低でも小学6年生までは続けるということだった。やるからには一所懸命、中途半端なことを許さない父親らしい約束事であ ...

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2023/2/7

【連載小説「辻家の人々」】008 一文無しの家出/辻ヤスシ

※この記事は許可を得て「アジト(note版マンガ雑誌)・辻家の人々008」より転載しております ※転載元はこちら ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 水泳に公文、さらには学習塾、と小学4年生になった頃には週6日が習い事で埋まっていた。 休日に朝から出掛けたり、学校終わりに友達の家で遊ぶ時間なんて皆無に等しかった。 水泳に関しては自分からやりたいと言って通わせてもらっていたので文句はなかったけれど、勉強系の2つは母親の強制。周りの友達は毎日のように遊び呆けているのになんで ...

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2023/2/7

【連載小説「辻家の人々」】007 ノムさん/辻ヤスシ

※この記事は許可を得て「アジト(note版マンガ雑誌)・辻家の人々007」より転載しております ※転載元はこちら ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 辻家の新年は決まって東京都港区にある増上寺で迎える。 年が明ける数時間前に現地に到着し、無料配布の風船を貰い、願い事を書いた紙を結び付ける。 それを午前0時に数万人の参拝客と一緒に夜空へと飛ばすのだ。これは父親がプロ野球選手になった年からの恒例行事である。 小学5年生。 この年も例に漏れず増上寺へと参拝に訪れていた。風船を ...

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2023/2/7

【連載小説「辻家の人々」】006 運動会・後編/辻ヤスシ

※この記事は許可を得て「アジト(note版マンガ雑誌)・辻家の人々006」より転載しております ※転載元はこちら ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 父親が運動会に来てくれた夜、興奮して中々寝付くことができなかった。 その理由は父親が初めて学校行事に来てくれたからでも、一生懸命走った姿を見せることができたからでもない。 運動会後に友達や学校の生徒が、父親にサインを求めて長蛇の列を作ったからだ。地元チームのプロ野球選手にここまでの人気があると初めて知ったからだ。 自分はそ ...

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2023/2/7

【連載小説「辻家の人々」】005 運動会・前編/辻ヤスシ

※この記事は許可を得て「アジト(note版マンガ雑誌)・辻家の人々005」より転載しております ※転載元はこちら ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 1991年、9月の日曜日。 この日に降った雨は、小学2年生だった自分を人間として大きく成長させてくれたと思う。 プロ野球のシーズン中は火曜日から日曜日までの6日間で試合が行われ、基本的に月曜が休みとなっている。そのため、父親参観日や運動会など、土・日・祝日に行われる学校行事に父親が来ることはなかった。 母親からは小学校に入 ...

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2023/2/7

【連載小説「辻家の人々」】004 テレビ初出演は4歳/辻ヤスシ

※この記事は許可を得て「アジト(note版マンガ雑誌)・辻家の人々004」より転載しております ※転載元はこちら ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー プロ野球のシーズンオフと言えば珍プレー好プレーにバトルスタジアム、リアル野球盤など、プロ野球選手がテレビに出演する機会が多い。 しかし、現在のそれは実は一昔前に比べて大幅に減っている。 かつて(自分が幼少期の頃)、プロ野球選手だけのカラオケ大会やボーリング大会、街ブラ企画や優勝旅行特番などなど…がテレビで、しかもゴールデン ...

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2023/2/7

【連載小説「辻家の人々」】003 号泣のお遊戯会/辻ヤスシ

※この記事は許可を得て「アジト(note版マンガ雑誌)・辻家の人々003」より転載しております ※転載元はこちら ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 両手を前に突き出して拳を握る。 そこから親指と人差し指を立て、左右の人差し指を向かい合わせれば準備完了。 あとは曲に合わせて人差し指を下へ上へと繰り返せば、人生初の幼稚園お遊戯会は問題なく成功する…ハズだった。 お遊戯会当日。 体育館は満員だった。年少である自分たちの学年、そして年中組・年長組の児童たち加え、その父兄たちも ...

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2023/2/7

【連載小説「辻家の人々」】002 サラブレッド/辻ヤスシ

※この記事は許可を得て「アジト(note版マンガ雑誌)・辻家の人々002」より転載しております ※転載元はこちら ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー プロ野球選手の息子だからといって、必ずしも身体が強かったり、運動神経が良いわけではない。 ただ、辻家に限っては母親の身体能力も高かった。母は、小・中・高の体育の成績はすべて最高評価、体育祭では毎年リレーの選手、長距離走では市の大会で優勝をした経験アリ、さらに社会人になってからはサーフィンでブイブイ言わせていたらしい。 要す ...