コラム

【連載小説「辻家の人々」】004 テレビ初出演は4歳/辻ヤスシ

※この記事は許可を得て「アジト(note版マンガ雑誌)・辻家の人々004」より転載しております
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プロ野球のシーズンオフと言えば珍プレー好プレーにバトルスタジアム、リアル野球盤など、プロ野球選手がテレビに出演する機会が多い。

しかし、現在のそれは実は一昔前に比べて大幅に減っている。

かつて(自分が幼少期の頃)、プロ野球選手だけのカラオケ大会やボーリング大会、街ブラ企画や優勝旅行特番などなど…がテレビで、しかもゴールデンタイムに大量に放映されていた。テレビでプロ野球選手を見ない日はないレベルである。

オフシーズンのプロ野球選手が様々なテレビ番組に出演するのは当たり前だったのだ。

自分の父親も例外ではなかった。

当時の自分は4歳。突然、家族3人で父親の故郷である佐賀県へと行くことになった。理由は「その年に活躍した選手の故郷を巡る旅番組」の撮影のため。

ライオンズが日本一に輝き、そこである程度の活躍をした父親に出演オファーがきたのだ。番組のタイトルは…

『やっちゃん・はっちゃん珍道中』

親父の名前はハツヒコゆえに’’はっちゃん’’。気になる’’やっちゃん’’は…と言えば、まさかのヤスシ…つまり、自分だ。

別に子役をやっていたわけでもないのに、息子というだけで素人の4歳児にもオファーがきた。しかも冠だ。一応、もう一度言う。地上波のゴールデンタイムだ。

撮影は親父の母校や有名な海中公園に行ったり、名物の烏賊を食べたり、故郷の佐賀県を紹介しながら息子との旅を楽しむという内容。

壁に登ろうとして背中から落ちて大泣きしたり、踊り食いで口の中をピンピン動く烏賊にビックリしてカメラの前でゲロっちゃったり…とハプニングは多々あったものの、撮影仲は楽しかったことを今でも覚えている。

その映像を大人になって見返したことがあった。

そこには、カメラや音声のスタッフに飴をあげたり、荷物の重さを心配したりと気の使える4歳児の姿が映っていた。

我ながら驚いたというか、感心したというか……ともあれ、スタッフの方に大きな迷惑を掛けることもなく、自分のメディアデビューは幕を下ろしたのだった。

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