新チームで練習の日々を送り、秋がやってきた。春の選抜甲子園予選まで2週間となった10月のある日、練習試合の中盤で――“それ”は起きた。 相手の中軸バッターがジャストミートした強烈な打球がサードの僕を一直線に襲った。僕は必死にグローブを出し、ボールをキャッチした…と思った瞬間、目の前が真っ暗になった。 ――見慣れた天井と扇風機の強烈な羽音、それと遠くに聞こえる選手たちの声。目を覚ました僕は、ここが部室であることをすぐに察した。重い体を無理矢理起こすと目の前に紐の切れた自分のグローブが置いてあった。僕は再び横 ...